Designer’s old car life

久しぶりの更新となるジャーナル。

Varde77のデザイナー宮田氏は古すぎない旧車好き。その思想には洋服作りと同じような共通点がいくつも垣間みれる。

洋服の生産工場を探す時と同じように、古い車に乗るには専門の主治医が必要と宮田氏は語る。

今回はVarde77デザイナーの愛車について取材をしました。今年は育休ということで洋服作りやリリースを制限している宮田氏。そんな沈黙を続ける宮田氏のプライベートに迫る車について、色々語って頂きました。

今回は宮田氏の所有する旧車 TOYOTA LAND CRUISER 60 1982年式とMercedes-Benz W124 300TE 1990年式をご紹介させて頂きます。

宮田氏のランクルの主治医であるランドクルーザーをメインに扱う4WDプロショップ『RVファクトリー』の石塚様にもインタビュー形式でお話を伺いました。

ゲスト: RVファクトリー 石塚様 写真:Yuto Kibe

ライターM: 本日は宜しくお願いします。

石塚:   4WDのチューニングショップの石塚です。宜しくお願いします。現在はランクルをメインにジムニーのチューニングも行っています。外観をカスタムして販売をするお店が多い中、うちは走りや乗り心地など乗った時の楽しさや操作性を追求した本物思考のお店です。

ライターM: お店をオープンしたきっかけを教えてください。

石塚:  子供の頃からプラモデルを作るのが好きで、そのまま大人になった感じです。他社でメカニックの経験を積んで、自分が好きなことができる自分のお店を持ちました。要は1/1のプラモデル屋さんだと思っています。ジムニー工房は以前働いていた会社が廃業する時に引き継ぎました。

ライターM: 宮田さんとの出会いは?

石塚: 単純にランクルが気になって観にこられました。

宮田: 仕事で荷物の入る車が必要で、荷物が入る大きめの社用車を探していたのですが、その時に実際に乗るなら好きな車に乗りたいと思って、昔から乗ってみたかったランクル60が車室が広かったのを思い出して探し出しました。探してみると昔より非常に値段が高くなっていて、躊躇しましたが、せっかくなら最強のランクル60が欲しいと思ってこちらのお店に行きつきました。

ライターM: こちらのお店の魅力はなんでしょうか?

宮田:   お店をみたらわかる通り、オタク性です。旧車を所有しているとパーツがないという事態に陥ることが多い。だからパーツを持っているお店やパーツに詳しいお店、パーツを集めるバックボーンが多いお店が信頼できるお店だと思っています。洋服を作ってもらう工場を探す時と同じように、自分には生産する技術がないので、技術や感覚の上で信頼できる工場を探します。それと同じように、旧車を手に入れたいと思ったら、まずはメンテナンスやチューニングをしっかりしてくれるプロのお店を探したい。出来れば色々な車種やメーカーを扱っているわけではなく、得意なメーカーなどに特化したお店が理想です。車に関して色々みていると、外観を綺麗にかっこよくして中身を誤魔化して、儲けるために販売している中古販売店が多いと感じています。 そういったお店に騙されないように、外観は自分の指示でなんとでもなるはずなので、中身をしっかりチューニングしてくれる店に信頼をおきます。僕にとっては川崎という都内と湘南の間にある立地も理想でした。

石塚: うちはどちらかというと外観にこだわるより、中身のことしか考えていないお店かもしれません。

宮田: 僕の弱い部分を補ってくれて、僕が外観を整えて綺麗にしたいと伝えるとそれにも対応してくれるので、非常に助かっています。

ライターM:   宮田さんのランドクルーザー60の年代は何年式でしょうか?

宮田:  1982年式です。アメカジ好きだといわゆるストレートなアメリカンな車が好きな人が多い。でも最近は服も車も古すぎるものに少し抵抗があって、ヴィンテージすぎないヴィンテージが好きなんです。リーバイス501で言えば70年代の66あたりというかむしろ606の70年代ものがいい。アメ車の1960-70年代ではなく、日本車の80年代、ドイツ車の90年代を選ぶあたりに捻くれ者感が出ている気がします。でも最近は資産価値なども考えて車を買うようになっているので、ある程度王道な車種を選ぶようにしていて、不人気車は選ばないようにしています。独身だったらまた違う車種を選んでいるかと思いますが、今は必ず4ドアが必須です。以前乗っていた三菱のL型パジェロはいわゆる不人気車種でしたが、今でも買い戻したいぐらい素晴らしい車でした。

ライターM: 40年も前のとても古い年式ですし国産ヴィンテージと言えるのではないでしょうか。カスタム、チューンナップ、リペアなどされている箇所を教えてください。

石塚:  ランクル80に搭載されているFJ61Vのエンジン1FZ4.5Lツインカムエンジンをランクル60に換装

82年式のためマニュアルミッションだったミッションをオートマミッションに換装

ボディ自体は80年代前期のオリジナル丸目仕様

内装に使われているシートは80年代後期、角目に搭載されていたスタンダードシートに入れ替え

ボディ全体はグレーカラーにオールペン、グリルはマットブラック塗装

ヘッドライトLED仕様に変更

現在では手に入らない、デセム10の16インチアルミのホイール

チャンプ佐藤さんが作ったFOXショックアブソーバー

純正ステアリングリペア

ダッシュボードリペア

足回り錆止めオールペン塗装

細かいところはまだまだありますが、だいたいこんな感じでしょうか。うちではSUPER CRUISERと呼んでいて、まさに究極のカスタムチューンナップされたランドクルーザーになっています。ナルディーのステアリングを取り付ける方が多い中、宮田さんはオリジナルのステアリングを選んでリペアして乗られています。ダッシュボードも綺麗になるように何度もリペアさせてもらいました。まさに宮田さんだけのランクル60になっているかと思います。

ライター M: かなり手の入った仕様ですね。宮田さんこだわりの部分なども教えてください。

宮田:    そもそも古い年式の車で一般的なランクル60はパワーがなくスピードも出ないと聞いていたので、80のエンジンに載せ替えられているのはとても理想でした。ランドクルーザー80の車体に丸目キッドを使って外見を変えているカスタムは最近多く目にするようになりましたが、この個体はその逆。オリジナルのランクル60がベースになっていて、操作性や耐久性が上がっていてオートマに換装しているため、社用車として使いやすい。オートマ仕様になっているのは奥さんも運転できるので、とても理想的でした。僕自身、やれすぎた車は苦手で適度にやれているぐらいの車が好きなので、ダッシュボードをリペアしてもらったり、内装も少し自分でリペアしたりなどして、この年式の車の割には綺麗になっているかと思います。ブラウンのシートベルトで統一したかったけど、パーツがなくフロントはグレー、リアはブラウンと色があっていないのは少し気になる点ですが、基本的にボディはグレーなので、変ではないかと少し妥協しています。僕は目が悪いので、ヘッドライトはLEDにして明るくしてもらいました。写真にあるエンブレムも見たことがなかったので、とても気に入っています。80年代前半のオリジナル性を崩さずに、現代で乗りやすい仕様にアップデートしたデザインやチューンナップがとても気に入っています。こんなランクル60を組み立ててくれるお店はなかなか見つからないと思います。

ライター M:  ランクルにFOXショックアブソーバーが装着されているのが意外でした。

石塚: 私の友人のチャンプ佐藤さんという方が数年前にランクルを最高の乗り心地に変えてくれるFOXショックアブソーバーを開発しました。このFOXショックアブソーバーを使うことで10-20年前では考えられなかったランクルの乗り心地を体験できるようになります。納車時に宮田さんのランクル60にもおすすめして、搭載させて頂きました。私はオフロードに走りに行って、車をベコベコにして遊ぶようなことを昔からよくしていました。今はランクルの車体自体の値段が高くなって、もったいなくてそういったことは出来なくなりましたが、ランクルのチューニング屋をしていて色々な失敗も重ねて、ランクルの最強のチューンナップの経験を詰みました。その昔、ランクルのチューニングに無駄にお金をたくさん使ってきたので、お店のお客様には極力お金をかけずに、最高のランクルがお届けできるようにと思ってお店を運営しています。

ライターM:  今回はランクル60が修理で入庫中とのことですが、どのような内容でしょうか?

宮田: オートマミッションの調子が悪くなってきたので、ミッションを丸ごと入れ替えてもらいます。それに加えて、ランクル60はクリアガラスで夏はとても暑いので、フィルムを貼って暑さ対策もしてもらいます。仕事で使う車なので荷物を積むことも多く、車内が見えないようにしたいというのもあります。古い車なので、連絡を取り合って気になる部分を伝えて、気軽にメンテナンスしてくれるのが魅力です。

ライターM:   今後おすすめしたいチューンナップはありますか?

 石塚: キープスラントという日本一の板ばねを作っているところがあるので、その板ばねを搭載すると、さらに乗り心地が良くなるので、いつか宮田さんのランクル60にも搭載してもらいたいです。

ライターM:   ランクル60に限らず、おすすめの車種もお願いします。

石塚: ランクル100はまだ値段も上がっていないので、チューンナップするにはとてもおすすめの車種です。ランクルではありませんが、ハイエースもFOXショックアブソーバーでアルファード並みの乗り心地の良さに激変するため、とてもおすすめです。

ライターM:  宮田さん、今後ランクルを狙っている読者の方達に向けてアドバイスをお願いします。

宮田: 都会の都市部ではディーゼル規制があるため、NOX適合していないディーゼルの車が乗れません。ディーゼルでNOX適合している車体、ガソリン車の車体はとても少なくなっています。その中でも古い年代の車なので、錆が多い車体も多い。石塚さんもおっしゃっていますが、錆のない個体を探して欲しいです。見つけたら悩んでいる時間はありません。こちらのRVファクトリーさんは車検のたびに、足回りを黒塗装をして錆が広がらないようにメンテナンスしてくれるお店。普通はディーラーで車検をやる方がいいと思われがちですが、ディーラーではそういったところまでアドバイスしてくれるところは皆無かと思います。古い車でもメンテナンスをしっかっりして、いい主治医を見つければ、快適に乗ることができると思うので、相性のいい車屋さんを、ぜひ見つけてください。

そして、宮田氏のもう一つの愛車『Mercedes-Benz W124 300TE』こちらは宮田氏のみのインタビューでご紹介します。

ライターM:  まず、このメルセデスW124 300TEを手に入れたきっかけを教えてください。

宮田:   仲のいい友人が乗っていたので、手放すときに連絡して欲しいと伝えていて、手放すタイミングで譲ってもらいました。

ライターM :  今まで乗った車で一番気に入っているとお聞きしています。どんなところが気に入っているのでしょうか?

宮田:   スピードを出すタイプではないので、ゆっくり安定的な走りが特に気に入っています。あと単純に主張の強すぎない外観や内装も気に入っています。基本的に車の性能とか乗り心地とかは古い車に求めるものではないけど、このW124は発売当時の時点でのクオリティーの高さから、その両方を兼ね揃えている感じがしています。現代のマツダでもこのメルセデスのW124を参考にして車を作っているという噂も聞いたことがあります。内装で言えば、このW124というのはブラックやネイビーなどの合皮仕様になっているものが多い中、ベージュ系のファブリックになっているのが、とても気に入っています。このメルセデスは、当時悪い人たちが乗っていたイメージもあるので、このファブリックがこの車の柔らかさを出してくれている気がしています。このアイボリーのファブリックで販売している車体は日本にはもう存在しないと思います。

ライターM:    カスタムなどされている点を教えて頂きたいです。

宮田:  友人が手に入れた時点で、かなり地味に色々カスタムされていると聞いています。というかその友人のために組み立てられた特別な1台と聞いています。前の所有者はここでは言えませんが皆さんも知っている方です。その友人から譲り受けたというのも思い入れが強い要因です。オリジナルと比べてどこがカスタムされているかは把握していませんが、まずクラシックホワイトという色でオールペンされていて、バンパーなどもマットブラックで塗装されています。ステアリングもかなり大きめなものに取り替えられていて、ホイールもこの年式ではない前期のものが取り付けられています。

ライターM:   宮田さんが譲り受けてから、手を入れたところはどこでしょうか?

こちらの車は神奈川県平塚市にある『サカモトエンジニアリング』さんというオールドメルセデス専門の修理工場で内部を徹底的に修理してもらいました。レッカー車の運転手の人にあの修理工場はオールドメルセデスで日本で3本の指に入る素晴らしい修理工場だと教えていただいて、面倒をみてもらっています。ステアリングギアボックスやミッションのオーバーホール、ブレーキ関係、サスペンション関係、オイル漏れ、バッテリー関係、エアコン関係など、数えきれないほど、たくさんの箇所を修理してもらいました。かなり修理にお金もかけているので、もう手放したくありません。笑

逆に気に入っていないところはありますか?

宮田:  キャリアですね。ネットでかたちが気に入ったキャリアを購入したのですが、素材感があまり気に入っていなくて後悔しています。キャリア捨てるのも面倒なので、そのまま乗っています。

ライターM: 前からこの車種を入手したくて狙っていたのでっしょうか?

宮田: 本当はW123 280TEというのが欲しかったんです。でもずっと見ているうちに、なんだかクラシックすぎてちょっと頑張っている感があって恥ずかしいかもしれないと思うようになりました。 その時にこの後継者であるW124 300TEを見た時に古すぎない気張りすぎない、なんとも言えないこの時代のデザインに惹かれるようになりました。なによりも280TEはパーツがもう廃盤になっていて手に入らないことが多いため、維持に苦労すると聞いていたので、選択肢から外しました。とはいえ、W123も今でもパーツが出るのであれば、欲しい車ではあります。W124の方が自分にはあっている気がするだけです。

ライターM: どんな時にこの車を乗っていますか?

宮田: 基本的には仕事に行く時はこの車を一番使っています。個人的には別のファミリーカーもあるので、仕事関係で乗ることが多いです。最近はキャンプもしたいと思って、キャンプ用品を揃えたので、いつか子供達を連れて泊まりでキャンプに行きたいと思っています。洋服を着ることもある意味自分の自己表現だと思っているのですが、乗っている車も自己表現だと思っています。その人が乗っている車で、その人の人生観みたいなものが垣間見れると思っているので、自分という人間を車で一番表現できるのが、この車だと思います。

ライターM: 今後、欲しい車などはあるのでしょうか?

宮田: 今のところ、所有している車で満足しているので特に欲しい車はありませんが、奥さんが乗っている車が小さくて家族4人には狭いので、一台ミニバンは欲しいと思っています。

ライターM : メルセデスに憧れる読者も多いかと思います。メッセージをお願いします。

宮田: 僕はメルセデスだからいいというイメージは持っていません。何事も金額で価値を判断するのは嫌いです。どちらかというとメルセデスはステータスがあるイメージがあるため、苦手でした。でも乗っているとなぜか自分にフィットしているという感覚になりました。何事も肩書きや知名度、ステータスなどに振り回されずに、自分にあうものをしっかり見つけて欲しいです。メルセデスもドイツに行けば、日本のトヨタのような存在。服も車も世間一般的なイメージやステータスに左右されない、ブレないものの選び方ができると楽しいと思います。

宮田氏着用 

TOPS:90’S VINTAGE LEVIS 70506 BLACK DENIM JACKET

PANTS:Varde77 makeover sample

SHOES:NIKE REVADERCHI

PHOTO:kibe Yuto

取材協力

株式会社 アールブイ・ファクトリー
〒213-0032 神奈川県川崎市高津区久地3-14-7
TEL 044-844-1680/FAX 044-844-1647
営業時間 AM10:00〜PM8:00 木曜定休

今回はお客様からリクエストの多かったデザイナーの愛車をご紹介をさせて頂きました。次回のジャーナルもお楽しみに!